2026年 衆院選総括

―― 支持が広がらない要因の構造分析 ――

はじめに

2026年衆議院選挙の結果は予想通り、あるいは予想を上回る後退だった。長期の退潮傾向に対する総括もまた、既定路線に終始している。「結果は悔しい。逆風と自力不足が原因だが前進面もある。方針に確信を持ち、次に向けて捲土重来を期す」――。こうしたお決まりの内容は、幹部の責任には踏み込まず、現場の努力不足に責任を帰する構図となっている。

2月の選挙直後には「党内外の意見に耳を傾け、3月の第8回中央委員会総会で総括する」とされたが、従来と異なる展開は見られなかった。そればかりか、その8中総では、これまでの方針を、今更「誰が見てもできない目標」と認める決定をした。これは単に数値目標だけの問題ではない。

正式な総括も不十分なまま、選挙直後の常任幹部会声明の討議を経て、従来方針に基づく活動継続が指示された。執行部に、本格的な検証を行う意思があるのか疑問が残る。

高齢化、党員減少が進む中で、現場はすでに限界に近い負担を強いられている。現状にあった方針を示さず、さらなる奮闘を求めるばかりでは持続可能性を欠くと言わざるを得ない。

以下の論点は、選挙直後に整理したものだ。論点はもっとあるかもしれない。また、これらに対する異論も多々あるに違いない。何よりもまず「言論の自由」が確保され、広範な意見交換が行われる中で、深く本質的、抜本的な検討が、民主的になされることを強く望む。


幹部刷新と民主集中制の見直し

大会前に配布される「大会決議案に対する感想・意見・提案」の約3分の1に、党への批判的意見が含まれていた。これらの声は幹部にも届いているはずだが、大会において十分な応答は示されていない。

上級会議は形式化し、実質的な議論の場として機能していないのが実態だ。同調圧力や威圧的対応が想定される状況下では、率直な意見表明は困難である。

規約上、異論の公表や組織的議論は「分派活動」として制限されており、これを理由とする処分も存在する。しかし、このような規制は現代社会の言論環境と整合しない。憲法上の「表現の自由」との関係においても、支持拡大の障害となり得る。

閉鎖的な人事と議論環境のもとでは、方針や体制の改善は期待し難い。党内外の知見を取り入れ、規約や綱領の見直しも含めて検討できる柔軟な幹部体制の構築が不可欠である。

開かれた組織と理論のアップデート

近年のマルクス研究や現代の社会主義論において、共産主義社会は「青写真なき理想」として捉えられ、直接的な政治目標とはされない傾向が強い。搾取の消滅の可否や必要労働の扱いなど、理論的課題は依然として山積している。

現行綱領は当面の目標として民主主義革命を掲げるが、従来の社会民主主義批判との関係整理は十分とは言えない。党の存在意義をめぐる理論的再検討が不可欠である。

安全保障政策の具体化

個別的自衛権を前提とする場合、どのような自衛力を想定するのかが不明確である。「戦力以外の自衛力」という説明では、具体的な安全保障環境への対応策が示されていない。

また、「自衛隊は違憲だが政権参画時には合憲として扱う」とする立場を「自民党が生んだ矛盾」と責任転嫁する説明は、党自身の整合性に関する疑問への回答になっていない。

政党助成金への対応

政党助成金は、現実的に大きな財政的支えとなる制度である。これまでの受け取り拒否の理由は、説得力を欠いている。制度に反対しつつ受給することに矛盾はない。他党が成立させた法律に反対していても、実務上はその法律に従っている事例は多々ある。

政権に入れば自衛隊を「合憲」と言い切る柔軟性があるのなら、助成金を受給しながら制度そのものには堂々と反対を続ければよい。現状では、日本共産党の不受給分が他党に配分されており、支持者の意思反映という観点からも再検討の余地がある。まずは、好ましくない献金の規制強化を優先すべきだ。

共闘方針の明確化と制度改革

野党共闘を状況に応じて柔軟に運用するのは妥当だが、基本方針の一貫性が問われる。あわせて、小選挙区制における死票の問題や、供託金の没収を避けるための戦略的判断も不可欠である。

SNS戦略の再検討

SNSは「発信量」ではなく「内容」が問われる媒体である。個人が規約に縛られ自由な発信を制限される中での一方向的な情報発信ではなく、双方向の対話を前提とした運用が不可欠である。現行の「強化策」は手段に偏り、内容の刷新が伴っていない。

「社会主義・共産主義の問題」への対応

第29回党大会における志位氏の発言(中央委員会を代表してのあいさつ)で、全党的な十分な議論を経ぬまま、「社会主義・共産主義の問題」が後退の最大の客観的要因と規定された。しかし、これは外的要因というよりも、長期的に対応を怠ってきた「主体的要因」ではないか。その克服策を『資本論』学習の拡大のみに求めることが適切かどうか、再検討を要する。

海外事例からの教訓

ニューヨークのマムダニ市長の事例が示すのは、生活課題への焦点化、大規模な対話型運動、草の根からの候補者擁立、そして柔軟な情報発信である。付け焼き刃の「ストリート対話」など、形式的な活動や表層的な模倣では成果は期待できない。


おわりに

現状の課題は、選挙の度に繰り返される逆風や個別の戦術問題ではない。組織構造・理論・政策の総体に関わる根深い問題である。部分的修正ではなく、開かれた議論と制度的見直しを伴う抜本的な再検討こそが、今求められている。

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