はじめに――※「しばき隊」をめぐって
いわゆる「しばき隊(※ 文末に解説)」をめぐり、一部党員を含む市民による抗議活動の過激化や威圧的な言動、言論を封殺するような振る舞い、あるいはSNS上での攻撃的な行動に対して、「社会的に許容されない」との批判の声が高まっている。
最近でも、路上で高市首相の顔を描いた紙コップをコルク銃で撃つ様子をSNSに投稿した動画や画像が、平和を希求すべき日本共産党員及びその支持者の行為として極めて不適切だとして、大きな物議を醸している。
これに対し、一連の活動は差別やヘイトスピーチへの対抗運動であり、それらを批判することは差別を容認することに等しい、との反論もある。しかしここで重要なのは、その批判の賛否ではなく、社会から実際に疑問や批判の目が向けられているという事実だ。
日本共産党は、この問題の直接の当事者ではないと説明することもできるだろう。しかし、活動家との関係や選挙・集会での協力関係、一部党員による擁護的な発言が存在する一方で、党としての公式な見解が全く示されていないことなどから、党幹部や党の姿勢そのものに疑問を抱く人々が存在することもまた事実である。
この問題への疑問は許されるのか
重視すべきは、「しばき隊」に対する評価そのものではない。まず認識すべきは、この問題に対する社会的な批判や疑問が現実に存在するという事実であり、問われているのは、日本共産党がそうした批判や疑問をどのように受け止め、社会に対してどのように説明するのかという点だ。
問題の核心は、「しばき隊」の活動の是非ではなく、社会から向けられた疑問に対し、党がどのように説明責任を果たすのかにある。批判内容の妥当性と、批判が存在しているという事実自体は、明確に区別して考えなければならない。
ここで問いたいのは、こうした状況下において「社会的な批判が存在することを認識すべきではないか」「党としてどう考えているのかを説明すべきではないか」と問うことが、果たして党への攻撃に当たるのか、ということだ。むしろそれは、党への不信や誤解の拡大を防ぎ、社会的信頼を維持するための建設的な問題提起ではないだろうか。
しかし現実には、このような問題提起であっても、党に不利益を招く発言、あるいは党への攻撃として受け取られる可能性がある。ここに、日本共産党の組織運営に関わる、より本質的な問題が存在している。
問われているのは「批判の内容」ではなく「評価の仕組み」
「しばき隊」問題に限らず、辺野古沖での高校生死亡事故や、党内異論への対応など、説明責任をめぐる問題において、しばしば争点となるのは発言内容そのものだけではない。真の問題は、「その問題提起を誰が評価するのか」という点にある。党に説明責任を求める発言を「党の利益にかなう建設的な提案」と受け取ることも、「党への攻撃」と見なすことも可能なのだ。
問題なのは、その評価を行うのが、しばしば批判の対象となっている党幹部自身であることだ。批判対象者自身が、自らに対する批判の妥当性を判断する仕組みは、一般社会においては「利益相反」と呼ばれ、その公平性や客観性に疑義が生じるのは当然である。
第三者機関を求める党が、自らには求めないのか
日本共産党はこれまで、社会的影響力を持つ組織に対して、第三者機関による検証や独立した監視の必要性を繰り返し主張してきた。その理由は明確である。当事者だけでは客観的な判断が難しく、権限を持つ者へのチェックが必要だからだ。この原則が普遍的なものであるならば、政党である日本共産党自身にも当てはまるはずである。
党員の異議申立て、規律問題、幹部の責任問題、さらには組織運営をめぐる紛争などにおいても、独立した審査や調停の仕組みが求められるのではないだろうか。他者には第三者による検証を求めながら、自らの組織に対しては内部判断だけで十分とするならば、その姿勢の整合性が厳しく問われることになるだろう。
党大会は本当に最高議決機関として機能しているのか
党規約上、党大会は党の最高議決機関とされている。本来であれば、党大会は幹部を正当に評価し、必要に応じてその責任を問う場でなければならない。しかし現実には、「党大会は幹部を実効的に統制できているのか」という疑問がある。
仮に党大会が、実質的に執行部の提案を追認するだけの場にとどまっているのであれば、最高議決機関としての機能は極めて限定的なものと言わざるを得ない。党員が幹部を評価し、必要に応じて交代させることができる制度が十分に機能しているかどうかは、党内民主主義のあり方を考える上で避けては通れない論点だ。
幹部へのチェック機能としての党首公選制
こうした問題を考えるとき、一つの選択肢として浮上するのが党首公選制である。党首公選制は万能ではない。しかし少なくとも、「幹部を誰が選ぶのか」という問題に対して、より広範な党員意思を反映させる可能性を持つ。
第三者機関による独立した審査機能の確立と、党首公選制をはじめとする幹部選出の民主化は、共通して「幹部へのチェック機能を強化する」という方向を向いている。これは特定の個人を非難するためではなく、組織の健全性を高めるために不可欠な制度改革である。
おわりに――問われているのは民主主義の自己適用である
ここで問われているのは、個々の幹部の善意や資質ではない。権限を持つ者に対して、誰がどのようにチェックを行うのかという、民主主義の基本原則そのものだ。日本共産党は長年、社会に対して透明性や説明責任、第三者補検証の必要性を強く訴えてきた。その原則が普遍的なものであるならば、自らの組織運営にも当然適用されるべきではないだろうか。
「しばき隊」問題への疑問を口にすることが許されるのか、あるいは説明責任を求めることが党への攻撃と見なされてしまうのか。その問いの先には、党の組織運営そのものをどのように改革していくのかという課題がある。
第三者機関の設置、異論表明の制度等保障、党大会の実効化、そして党首公選制の導入。これらは決して党を弱体化させるための提案ではない。むしろ、党が社会に対して求めてきた民主主義とガバナンスの原則を、自らの組織にも適用し、より健全な組織へと進化するための提案である。
※「しばき隊(正式名称:レイシストをしばき隊)」とは(AI による概要)
在日コリアンなどの特定の民族に対する差別扇動(ヘイトスピーチ)を行う団体に対抗するため、2013年1月に結成された日本の市民運動グループ。主な活動内容と関連する論点は以下の通り。
主な活動と特徴カウンター行動 ヘイトスピーチを行うデモ隊の進行ルートに先回りし、シュプレヒコールやプラカードで直接抗議や批判を行う「カウンター」と呼ばれる手法をとる。
活動の拡大 結成当初は「レイシストをしばき隊」として活動していたが、のちに「C.R.A.C.(Anti-Racism Action Committee)」などの関連グループへと発展した。
批判と論点過激な対立手法 現場での過激な罵声や直接的な対峙を行う姿勢から、社会運動の暴力化や分断を招いているとの批判がある。
暴力事件による離反 2013年末には、元メンバーらが関係する人物に対する暴行・恐喝事件(いわゆるC.R.A.C.リンチ事件)が発生し、有罪判決も出たことで大きな波紋を呼んだ。現在も、レイシズムや特定の政治的主張を巡るトラブル・抗議活動において、その存在がメディアやネット上で議論の対象となることがある。
