党財政の検証を可能に――党員による指導部評価のために

組織・運動

――党費・募金・選挙支出・監査・幹部印税から問う説明責任

はじめに:問うべき三つのこと

2024年の党中央委員会の収入総額は184億6238万円、支出総額は190億7503万円で、6億1265万円の赤字であった。政治資金収支報告書によれば、党費・会費は4億8364万6314円、個人からの寄附は7億389万9838円である。中央委員会と全国の都道府県・地区委員会に寄せられる個人寄附の合計は、毎年80億円近くにのぼる。

党自身は、この財政を「党員と支持者から寄せられる浄財」で成り立つものと位置づけている。そうであれば、問われるべきは次の三点である。

  1. この資金を何に使い、その支出は妥当だったのか。
  2. その結果、何が実現したのか。
  3. 誰がそれを監査し、資金を負担する党員自身がどこまで検証できるのか。

本稿はこの三点を軸に、党費、特別募金、JCPサポーター、選挙支出、監査制度、幹部著書の印税を順に検討する。そのうえで、財政の透明性が党内民主主義と指導部の責任にどうつながるかを論じる。

以下では、党員が財政を検証できる状態にあるかどうかを、各論点について確かめていく。

1 実収入1%の党費――負担を求めるなら、使途も検証可能であるべきではないか

党規約46条は、党費を「実収入の1パーセント」と定めている。党費は一時的な募金ではなく、党員が継続的に負担する組織運営費である。しかも党員や支持者には、党費とは別に、通常のカンパ、選挙募金、特別募金などへの協力も求められる。

政治資金収支報告書からは、人件費を含む大きな会計項目は分かる。しかし、党中央に何人の専従者がいるのか、給与・昇給・手当にどのような基準があるのか、中央役員や役職者の待遇を誰がどのような手続きで決めているのかは分からない。

人件費の総額が分かることと、その中身や決定基準を党員が評価できることは別である。継続的な負担を求める以上、少なくとも「専従者数」「給与・手当の基準」「役職別の待遇の考え方」「報酬の決定手続き」は、党員が検証できる形で示されるべきではないか。

2 特別募金――「目的」は説明されても「決算」が見えにくい

「赤旗」を守る10億円募金

党中央は2025年から「しんぶん赤旗」を守るための10億円募金を呼びかけ、2026年5月26日時点で10億1998万円に達している。党は使途として、日刊紙の赤字補填、編集用新システムへの移行、日曜版電子版、用紙代・印刷資材・輸送費などへの対応を挙げている。

しかし、10億円余のうち、日刊紙の赤字補填、新システム、電子版、用紙・印刷・輸送費にそれぞれいくら使ったのか。現在いくら残り、その残額を今後どう扱うのか。これらの決算資料は確認できない。

党本部ビル大改修募金

党本部ビル大改修募金も同様である。党中央は、寄附と無利子の「借入協力金」を合わせて5億円を集める方針を示し、2025年4月には両者の合計が5億430万円になったと発表した。事業の目的や途中経過は一定程度示されている。

しかし、「寄附はいくらか」「将来返済する借入協力金はいくらか」「各工事の最終費用はいくらか」「残金はいくらで、その後どう処理するのか」は確認できず、事業全体の決算も見当たらない。

詳細な報告の前例

詳細な報告の前例もある。2005年の党本部建設事業の終了時、党中央は事業全体の資金状況を公表した。工事総額は88億1996万円、建設積立金は51億1030万円、建設募金・協力借入金は43億4386万円などであった。

目的を限定して党員・支持者から資金を募る以上、終了後に「いくら集まり、何にいくら使い、いくら残ったのか」を示す説明責任があるのではないか。

3 JCPサポーター――寄附を集める主体と責任はどこにあるのか

JCPサポーターは、2017年12月の第3回中央委員会総会で、党中央が「中央として」発足させる制度として提起され、2018年2月に登録が始まった。党から独立した市民団体が支援を始めたのではなく、党中央の方針で発足した仕組みである。

2026年10月には、月500円から1万円を自動的に寄付できる「マンスリー寄付」が始まった。公式報道には「サポーター運営委員会」も登場する。寄付の窓口は党中央委員会財政部とされ、個人情報についても管理責任者を置くとしている。

では、党中央、財政部、JCPサポーター事務局、サポーター運営委員会の間で、誰が何に責任を負うのか。誰が寄付募集を決めるのか。誰が会計を管理するのか。運営委員会はどのように構成・選任されるのか。登録者の個人情報について最終的な責任を負うのは誰か。

継続寄付まで募る制度である以上、責任分担は明確にされるべきである。しかし、今のところ公開された情報からは確認できない。

4 財政は「効果があったか」も問われる

財政監査では、帳簿と領収書が一致しているか、規程どおりに支出されたかという会計上の適正性の確認が必要である。しかし組織運営ではそれだけでは足りない。その支出は本当に必要だったのか、当初の目的を達成したのか、より効果的な方法はなかったのか。費用対効果の検証も不可欠である。

4-1 供託金の没収をどう評価するか

日本共産党自身の第24回党大会議案によれば、2005年総選挙では275小選挙区に候補を立て、223選挙区で供託金が没収された。総額は6億6900万円に達した。

党は同時に、300万円という供託金を高額で反民主的な制度だと批判し、「衆議院小選挙区選挙供託金支援基金」を党中央に設けて、党員から自発的拠出を集める方針も示した。

ここには二つの問題がある。第一に、高額な供託金制度そのものが妥当かという選挙制度上の問題である。第二に、その制度が現に存在するもとで、政党が限られた財政をどう配分するかという組織運営上の問題である。本稿が扱うのは後者である。

候補擁立の価値は、当選したかどうかだけでは判断できない。候補者を立てれば政策を訴えられ、比例票につながる可能性もある。地域で党の存在を示し、新しい支持者や活動参加者を得て、組織形成につなげる効果もあり得る。したがって、「落選した」「供託金を没収された」という事実だけで、擁立が無駄だったと断定するのは適切ではない。

しかし、それならなおさら、何を成果とするのかを検証しなければならない。候補者を立てた選挙区で比例票は増えたのか。新しい支持者やボランティアが生まれたのか。党員や赤旗読者は増えたのか。その関係は選挙後も続いたのか。次の選挙に使える組織的基盤は残ったのか。

投入されるのは供託金だけではない。ビラ、ポスター、事務所、交通費、通信費、人的資源など、多額の資金と労力がかかる。数億円規模の供託金没収が生じても、それを上回る政治的・組織的成果があるなら、一つの合理的な説明は成り立つ。逆に、成果が確認できないまま同じ資源配分を繰り返しているなら、方針そのものの検証が必要になる。

要は、何を目的に資金を投入し、その目的をどの指標で測り、実際に何が残り、その評価を次の候補擁立にどう反映したのかを、党員が確認できるかどうかである。

4-2 党勢の長期後退との照合

この検証は、党自身が認める党勢の長期後退とも照合する必要がある。2024年の第29回党大会の時点で、党員現勢は25万人、「赤旗」読者は85万人となり、党自身がいずれについても「長期の後退から脱することができていない」と認めた。

候補擁立や選挙活動の効果として「支持拡大」「組織形成」を挙げるなら、長期的な党員数・読者数・選挙結果との照合は避けられない。選挙を重ね、多額の資金と人的資源を投入してきたのに党勢が縮小しているのであれば、従来の資源配分がどこまで有効だったかは、当然、検証の対象になる。

「自力が不足していた」と総括するだけでなく、その自力を形成するために使ってきた資金が、本当に自力形成につながったのかという逆方向からの検証も必要である。これは選挙論であると同時に、財政経営の問題である。

4-3 未配布ビラと海外訪問

多色刷りのビラを大量に印刷しても、配布できずに大量の残部が廃棄されるなら、印刷部数や配布計画が適切だったかを検証する必要がある。

海外訪問も同様である。国際交流や外交活動には、それ自体として意義があり得る。2026年の志位議長らの米国・カナダ訪問についても、党は政治的・理論的成果を詳しく報告している。

しかし、支出の妥当性を党員が判断するには、活動内容だけでなく、費用総額、参加人数、目的、具体的成果、その後の政策や活動への反映まで対応させて考える必要がある。支出を決めた側が「有意義だった」と評価するだけでは、財政上の費用対効果を検証したことにはならない。

5 監査委員会はある――しかし第三者監査ではない

日本共産党には監査委員会が存在する。党規約27条は、「中央委員会は、監査委員を任命する。監査委員会は、中央機関の会計と事業、財産を監査する」と定めている。しかし、監査委員を任命するのは、監査対象である中央委員会自身だ。

これは内部監査の仕組みとして意味を持つが、党中央から制度的に独立した第三者監査とは異なる。重要なのは、監査委員会が実際に何を検証し、どの支出を問題とし、どのような指摘や改善要求を行ったのかを、一般党員がどこまで確認できるかである。

制度改善の方法はいくつか考えられる。外部の会計・監査専門家を加える。監査委員の選任を執行部からより独立させる。監査結果と改善勧告を党員に報告する。どの制度を採るにせよ、問われるのは、財政を決める側と監査する側との間に十分な緊張関係があるかどうかである。

6 幹部著書の印税――党活動と個人的利益が接する問題

6-1 部数と売上高

新日本出版社から刊行された志位和夫氏の著書「赤本」「青本」「緑本」の印税はどうなっているのか。志位氏は2026年5月、自著について、「赤本」約8万部、「青本」約6万部、「緑本」約2万部と述べた。計約16万部である。また、当時約1万7000ある党支部のうち、7000を超える支部で学習しているとも説明している。

価格×部数の単純計算では、次の規模になる。

著書志位氏が示した部数本体価格価格×部数
青本『Q&A 共産主義と自由』約6万部818円約4908万円
赤本『Q&A いま『資本論』がおもしろい』約8万部1100円約8800万円
緑本『自由な時間と『資本論』』約2万部1600円約3200万円
計約16万部約1億6908万円

この1億6908万円は、もちろん志位氏の収入ではない。示された部数が印刷部数か実売部数か、契約上の印税率が何%か、印刷部数基準か実売部数基準かは公開されていない。仮に印税率を8~10%とすれば、約1350万~1690万円となる。契約条件次第では、1000万円を超える規模の印税が生じ得る部数であることは分かる。

6-2 問題の核心:組織の意思決定と個人的利益の重なり

問題は、党自身がこれらの著書の学習・普及を組織的に進めていることである。党の意思決定によって最高幹部の著書が全党的に普及し、その結果として著者本人の印税収入が増えるのであれば、組織上の意思決定と個人的経済利益が重なる。ここには利益相反管理の問題が生じる。

6-3 『新・綱領教室』と所得の増加

2022年4月、志位氏の『新・綱領教室』上下巻が刊行された。新日本出版社によれば、本体価格は各1500円である。同年分の国会議員所得公開では、志位氏の所得総額は2051万円で、内訳は給与所得1777万円、「事業所得など」274万円であった。日テレNEWSは、この年について「著作の印税などで雑所得が増えた」と報じている。

では、その印税はどう処理されたのか。

6-4 志位氏の党中央委員会への寄附

総務省公開の政治資金収支報告書から、志位氏による党中央委員会への個人寄附を月別に整理すると、次のとおりである。

月2022年2023年2024年
1月88,926円218,000円192,000円
2月24,000円271,446円210,958円
3月84,000円258,000円237,000円
4月73,927円217,000円188,000円
5月39,000円216,000円204,967円
6月91,000円235,000円256,000円
7月737,885円976,000円929,000円
8月116,000円193,000円169,000円
9月263,000円238,000円215,000円
10月219,000円193,000円170,000円
11月219,000円252,979円1,118,000円
12月1,168,000円1,356,000円415,000円
年間計3,123,738円4,624,425円4,304,925円

多くの月で、寄附は20日から25日前後を中心に行われている。さらに毎年、夏と冬には通常月より大きな寄附がある。

ここに見えるのは、著作収入が生じたときだけの一時的な寄附ではなく、毎月の継続的寄附に夏冬の大口寄附を加えた、反復的なパターンである。3年間の合計は1205万3088円、年平均は約402万円となる。

6-5 他の議員にも似た寄附パターンがある

2024年分について他の主要な党国会議員を見ると、党中央への寄附額は次のとおりである。

議員寄附額
小池晃氏486万2000円
吉良佳子氏432万8000円
志位和夫氏430万4925円
塩川鉄也氏318万4000円
田村智子氏259万892円

明細を見ると、他の議員にも月例の寄附や大口寄附がある。したがって、志位氏の年間300万~400万円台の寄附だけをもって、「著書の印税が党に還元されている」と判断する根拠は乏しい。とりわけ、『新・綱領教室』が刊行され、「著作の印税など」による所得増が報じられた2022年の寄附額は312万円余で、むしろ2023年、2024年のほうが多い。

2024年分までの収支報告書を見る限り、通常の寄附パターンとは別に、「印税の還元」と識別できる特別な資金移動は確認できない。もっとも、通常寄附の原資に印税が含まれている可能性はあるので、「印税を党に還元していない」と断定はできない。結局、問題は、公開資料からは確認できないことである。

6-6 年間400万円の寄附を、所得水準と税制を含めて見る

年間400万円前後の寄附は、それ自体としては大きな金額である。しかし負担の重さを評価するには、所得水準も見る必要がある。

2022年の志位氏の所得総額は2051万円、給与所得は1777万円だった。同年に1年を通じて勤務した民間給与所得者の平均給与は458万円である。一般の給与所得者と比べれば、高い所得水準にあったことも考慮しなければならない。

また、政党等への一定の寄附については、所得控除か税額控除を選べる。国税庁によれば、政党等寄附金特別控除は原則として「寄附額-2000円」の30%で、所得金額や所得税額による上限がある。仮に2022年の312万3738円が全額対象となり、上限にも抵触せず、本人が税額控除を選んだとすれば、控除額は約93万6500円となる。名目上の寄附額と、所得税だけで見た実質的な負担額との差は、約94万円ということになる。

志位氏が実際にこの控除を利用したかどうかは、公開資料からは確認できない。したがって、年間数百万円の寄附を軽い負担とみるべきではない。ただし、「400万円を寄附している」という額だけでなく、所得水準と税制上の扱いも含めて評価する必要がある。

6-7 幹部著書には明確な利益相反ルールが必要ではないか

幹部著書については、印税額を公開するだけで十分なのか。一般の著者が自著の印税を受け取ること自体には、何の問題もない。しかし、党中央が最高幹部の著書を党の学習対象に位置づけ、中央の方針として支部に学習・普及を呼びかけ、党員自身がその普及を担うのであれば、事情は異なる。販売の少なくとも一部は、党という組織の人的・組織的活動によって生み出されるからである。この場合、著書を全党的に普及するという組織上の意思決定と、著者本人の経済的利益が重なる。

利益相反を避ける方法としては、次のようなものが考えられる。「党組織による普及分の印税を党に還元」「全印税、または一定割合を還元」「党が全党的学習対象とする著書については、最初から印税を受け取らない契約にする」どの方式を採るかは制度設計の問題である。

重要なのは、その時々の幹部本人の善意や判断に委ねないことである。誰が著者であっても同じ基準を適用し、印税率、印税額、党への還元額、著書を全党的な学習対象とする意思決定過程を、少なくとも党員が確認できるようにする必要があるのではないか。

7 財政運営は、指導部の適否を判断する材料である

財政問題は単なる会計論ではなく、党内民主主義の問題につながる。党規約は「すべての指導機関は、選挙によってつくられる」と定め、党員に党内で選挙し、選挙される権利を認めている。党大会は中央委員会の報告を受けて「その当否を確認」し、新たな中央委員会を選出する。そして中央委員会自身に、「党の財政活動の処理と指導にあたる」責任が課されている。

そうであれば、財政運営の実績は、本来、指導部を評価する重要な材料になるはずである。財政情報の公開は、単なる会計報告ではない。誰に組織運営を委ねるのかを判断するための、組織民主主義の基礎資料でもある。

むすび:提案――党員が検証できる財政へ

党員が負担する資金である以上、その使途と成果を党員自身が検証できる状態をつくることが、本稿の求める第一の改革である。本稿で指摘した論点は、次のとおり整理できる。

  1. 党費と人件費:専従者数、給与・手当の基準、待遇の決定手続きなど、党員が検証できる情報を示す。
  2. 特別募金:目的の説明にとどまらず、終了後に収入・支出・残額の決算を公表する。2005年の党本部建設事業の報告は、その先例である。
  3. JCPサポーター:党中央、財政部、事務局、運営委員会の責任分担と、個人情報の最終責任者を明確にする。
  4. 費用対効果:供託金、ビラ、海外訪問などについて、目的・指標・成果・次回への反映を事後評価として示す。
  5. 監査:任命権者から独立した要素を加え、監査の内容と勧告を党員に報告する。
  6. 幹部著書:印税の取り扱いについて、個人の判断に依存しない一律の利益相反ルールを設ける。

いずれも、党員が負担する資金の使われ方を党員自身が検証し、その結果を指導部の評価に反映できるようにするための提案である。

財政情報が十分に示されなければ、党員は支出の妥当性だけでなく、その財政を運営してきた指導部の適否も十分に判断できない。財政の見える化は、党員の信頼を支える基盤であり、指導部が自らの責任を果たしていることを示す手段でもある。

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