日本共産党のSNS戦略を考える――340万表示は「国民に広がった」ことを意味するのか

情報発信・社会的影響

日本共産党は近年、SNS発信と拡散を重視している。党幹部や候補者の投稿に「いいね」「コメント」「シェア」を行い、全党的に広げることも方針化している。

SNSを重視すること自体は必要である。問題は、そこで生まれる「表示数」や「反応数」を、国民的な支持や共感の広がりと同一視してよいのかという点である。

志位氏のフォロワーは約25万7000人

2026年9月現在、志位和夫氏のXアカウントのフォロワーは約25万7000人である。これは、日本共産党の全国党員数約24~25万人とほぼ同じ規模である。

志位和夫 (@shiikazuo) on X
日本共産党議長の志位和夫です。力をあわせて一緒に政治を変えましょう。

ただし、フォロワーをそのまま支持者とみなすことはできない。報道関係者、他党の政治家や支持者、研究者、政治ウォッチャーなども含まれる。したがって、「フォロワー25万7000人」という数字は支持の大きさを直接示すものではない。

340万表示に対して、いいねは2500

具体例として、志位氏が2025年5月11日に投稿した「いま『資本論』がおもしろい」を見てみる。

この投稿は以下の反応を得ている。

  • 340万表示
  • 約1000返信
  • 約1400リポスト
  • 約2500いいね
  • 316ブックマーク

340万表示だけを見れば、非常に大きな反響に見える。しかし、表示数に対する割合を計算すると以下のようになる。

  • いいね:約0.074%(約1360表示に1いいね)
  • リポスト:約0.041%(約2430表示に1リポスト)

さらにフォロワー25万7000人と比較すると、2500いいねは約0.97%、1400リポストは約0.54%にあたる。

もちろん、これだけで「関心が低い」と断定することはできない。Xの表示数(インプレッション)は、ユーザーの画面にスクロール表示されただけでカウントされ、実際に読まれたかを意味しない仕様であるうえ、投稿の性格によって反応率も異なるからだ。

しかし、少なくとも340万表示を、そのまま「340万人に届いた」「広く共感された」と読むことはできない。


※ ちなみに「social democrat A」のX投稿では

表示数(3,564件)に対する割合(記事の投稿時では)
・いいね(33件):約0.93%(約108表示に1いいね)
・リポスト(17件):約0.48%(約210表示に1リポスト)
フォロワー数(164人)に対する割合:いいね:約20.12%/リポスト:約10.37%


組織的な拡散と社会的な広がりは別である

ここで重要なのが、日本共産党のSNS活動の性格である。

党は、党幹部や候補者のSNS発信について、「いいね」「コメント」「シェア」などによって全党的に拡散することを呼びかけている。

全国に約24万人の党員がいるとすれば、その1%が「いいね」を押すだけで約2400件になる。0.5%がリポストすれば約1200件である。これは、今回の2500いいね、1400リポストとほぼ同じ規模である。

もちろん、今回の反応の大部分が党員によるものだという意味ではない。しかし逆に、これらの反応がどの程度、新しい党外層から生まれたのかも分からない。党員の周囲には赤旗読者、支持者、後援会員などもおり、そこにXの推薦機能が加われば次のような循環が生まれうる。

  1. 党幹部の発信
  2. 党員・支持者による反応
  3. 表示機会の増加
  4. さらに拡散

従来の組織内の情報循環が、SNSのアルゴリズムによって増幅される構造であり、これは一種の「強化されたエコーチェンバー」と考えることができる。

340万表示と比例252万票

SNS上の数字が、社会的な支持の広がりを示しているかどうかは、現実の政治的指標と照合する必要がある。

日本共産党は2026年総選挙で、比例約252万票、得票率4.40%にとどまり、比例議席も後退した。党員数も、第29回党大会時点の25万人からさらに減少し、党自身が回復を重大な課題としている。

つまり、以下の数字が同時に存在していることになる。

  • 志位氏の一投稿:340万表示
  • 総選挙比例票:約252万票(比例得票率 4.40%)
  • 全国党員数:約24万人

SNSでは数百万表示が生まれているが、選挙支持や党勢がそれに対応して拡大しているわけではない。ここに、SNS上の「広がり」と社会的な支持の「広がり」の違いが明確に表れている。

問うべきは「何回表示されたか」ではない

SNS活動の目的が、党員・支持者間で情報を循環させることだけなら、表示数やリポスト数を成果として評価すればよい。

しかし、目的が新しい有権者に届き、支持を広げることであるなら、それだけでは不十分である。問うべきなのは以下の点である。

  • 誰に届いたのか。
  • 既存支持者の外側に届いたのか。
  • そこで新しい支持や信頼を獲得したのか。

フォロワー数も表示数も、支持者数ではない。いいねやリポストも、その主体が誰なのかを見なければ意味が違ってくる。まして党自身が全党的な拡散を呼びかけているのであれば、SNS上の大きな数字ほど慎重に分析する必要がある。

「双方向・循環型」なら批判も受け取るべきである

日本共産党は最近、「一方通行」ではなく「双方向・循環型」の活動を重視している。

それをSNSにも徹底するなら、党員が党幹部の投稿を拡散するだけでは足りない。党外から寄せられる批判、疑問、違和感、反論を分析し、なぜ支持されないのか、なぜ選挙で広がらないのかを検証する必要がある。

支持者からの「いいね」を数えるだけでなく、支持していない人が何を考えているのかを受け取る。そこまで含めて初めて、SNSは真に双方向の政治活動になる。

SNS上の数字と現実社会を取り違えない

党トップの「340万表示」の事例が明確に示しているように、SNS上の巨大な数字と現実の支持には大きな乖離がある。この事実から教訓を汲み取り、特に留意しなければならないのは、日々有権者と直接接する地方議員候補とその支持者たちである。

とりわけ都市部の選挙区などにおいて、内輪の熱狂的な反応を「地域社会への広がり」と安易に錯覚することは危うい。もしも、全国規模の動員であれば、なおさら、画面の中で作られたエコーチェンバーは、現実の地元住民の信任とは全く別物になる。

問われるべきは「ネット上でどれだけ拡散されたか」ではなく、目の前の地域住民が抱くリアルな声や違和感にどう向き合うかである。トップの事例に表れたSNSの罠に無自覚なまま、内輪の数字に一喜一憂しているだけでは、現実の地域社会との距離は開いていくだろう。


<追加資料> 記者会見での小池発言

4分35秒~(頭出し)「ま、あの、ネット上の、ま、デニー知事 に対する攻撃なんかも、ま、かなりの部分が9割以上が本土からの発信だということ も言われております」―― まさに、自党のSNSにも同様のことが言える

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